大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌高等裁判所 平成9年(行コ)17号 判決 1999年5月26日

札幌市北区新琴似六条一六丁目三番四号

控訴人

栗原之雄

右訴訟代理人弁護士

鶴見祐策

札幌市北区北三一条西七丁目三番一号

被控訴人

札幌北税務署長 藤田光洋

右指定代理人

千葉和則

井上正範

亀田康

川村利満

市川光雄

沢田和宏

神陽一

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  当事者の求めた裁判

1  控訴人

(一)  原判決を取り消す。

(二)  被控訴人が控訴人の昭和六二年分ないし平成元年分の所得税の確定申告につき平成三年二月二五日にした昭和六二年分の総所得金額一五六万〇八五九円を超える額、昭和六三年分の総所得金額一九六万七〇二七円を超える額、平成元年分の総所得金額二三五万四三一一円を超える額についての各更正並びに過少申告加算税を賦課する旨の決定をいずれも取り消す。

(三)  被控訴人が控訴人の昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの課税期間の消費税の申告納付につき平成三年二月二五日にした課税標準額五三〇三万一〇〇〇円を超える額についての更正を取り消す。

(四)  控訴費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

主文と同旨。

二  事案の概要

事案の概要は次のとおり付加・訂正するほか、原判決書「事実及び理由」中の「第二事案の概要」に記載のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決書三枚目表一行目の「昭和六四年一月一日」の次に「(平成元年四月一日、以下同じ)」を加え、同一一枚目裏六行目末尾に続けて「また被控訴人は昭和五九年にも控訴人の昭和五六年分ないし昭和五八年分の税務調査をしており、その結果控訴人の業態は大量受注のハウスメーカーの下請業者であってその収入金額に比べて所得金額が低いものであることを確認している。この点からみても今回の税務調査の必要性はなかった。」を加える。

2  原判決書一八枚目裏九行目の「補足」を「捕捉」に改め、同二一枚目表九行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「 工務店から受注する板金業者は札幌及びその周辺には電話帳に載っているだけでも一七三社にのぼり、そのうちほぼ九割は被控訴人の設定した倍半基準に包摂される業者である。ところが被控訴人が類似同業者として抽出したのはわずか四件にすぎず、全体数に比較してあまりにも少なすぎる。これは類似同業者の抽出過程が恣意的であることを窺わせるものであり、合理性を欠くものである。」

3  原判決書二二枚目表七行目の「松本建工」から同八行目の「明らかである」までを「松本建工からの受注が大部分を占めていた平成元年の原価率は五一・九四パーセント又は五二・八一パーセントであったのが、その後松本建工からの受注をやめて他の工務店からの受注に切り替えていった結果、原価率は松本建工からの受注が残っていた平成三年は四八パーセントであるが、平成四年及び五年はそれぞれ四二パーセント、平成六年は四一パーセント、平成七年は四〇パーセント、平成八年は三三・五パーセント、平成九年は三三・六パーセントと低下し、通常の建物板金業者の水準になっていることからも明らかである」に改め、同末行末尾に続けて「右の平成三年から平成九年までの原価率の数値はいわゆる本人率として正確なものであり、推計方法は個々の業者に種々の差異があることを当然の前提とせざるを得ない同業者率よりも本人率によるのが合理的である。」を加える。

4  原判決書二九枚目裏四行目の「五一三一円であり」の次に「(甲九六四)」を加え、同三一枚目裏八行目の「甲四三八」の次に「、甲五六四」を加え、同九行目の「甲六六三」の次に「、甲七九一」を加える。

三  証拠関係

証拠関係は原審及び当審訴訟記録中の証拠目録に記載のとおりであるからこれを引用する。

四  当裁判所の判断

当裁判所も控訴人の請求は理由がないから棄却すべきものと判断するが、その理由は次のとおり訂正するほか原判決書「事実及び理由」中の「第三 当裁判所の判断」に説示するとおりであるからこれを引用する。

1  原判決書三五枚目表三行目の「同日」を「一九日の」に改め、同三七枚目表末行の「被告は」を「控訴人は」に改め、同三九枚目裏四行目末尾に続けて「被控訴人は昭和五九年に控訴人の昭和五六年分から昭和五八年分の税務調査を行ったことが認められるが(原審証人相沢忠彦、原審における控訴人、弁論の全趣旨)、右事実は今回の調査に客観的必要性が存在したことを認める妨げになるものではない。」を加える。

2  原判決書四九枚目裏九行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「 また控訴人は板金業者は札幌及びその周辺には電話帳に載っているだけでも一七三社にのぼり、そのうちほぼ九割は被控訴人の設定した倍半基準に包摂される業者であるところ、被控訴人が類似同業者として抽出したのはわずか四件にすぎず、これはその抽出過程が恣意的であることを窺わせるものである旨主張するが、抽出の過程は前記認定のとおりであって、そこに課税庁の思惑や恣意の介在する余地のないことも前記のとおりである。」

3  原判決書五一枚目表七行目冒頭から同裏七行目末尾までを次のとおり改める。

「 控訴人の取引は松本建工との取引が多いことが認められるが(原審証人樫野仁八、原審及び当審における控訴人)、後記三のとおり、控訴人提出の証拠によっては控訴人の真実の総収入金額、松本建工からの受注金額、受注単価等を確定することができないから、工事全体に占める松本建工からの受注割合を具体的に認定することはできない。また原審証人樫野仁八、控訴人(原審、当審)は松本建工からの受注単価は他と比べて一〇パーセントから一五パーセント低い旨供述し、控訴人(当番)は、松本建工からの受注単価は別紙一(甲八二五)のとおりであるが、滝川市内の板金業者四名からそれぞれ受注単価を聞いたところ、長尺カラー鉄板は一九二〇円から二〇五〇円、長尺カラー鉄板(横ブキ)は二七〇〇円から三〇五〇円、谷コイルは六三〇〇円から七五〇〇円であり、これに比べても松本建工からの受注単価(長尺カラー鉄板一三八〇円、長尺カラー鉄板(横ブキ)一八二〇円、谷コイル五八〇〇円)は非常に低額である旨供述する。別紙一(甲八二五)の記載自体には後記のとおりその信用性に疑問があるが、右各供述によれば、控訴人が松本建工から受注する特定の工事の単価が他の特定の工事の単価と比較した場合低額であるものがあることが認められる。しかし」

4  原判決書五一枚目裏八行目の「受注割合の違い」を「受注割合の違いや受注単価の高低」に改め、同末行の「無視し得るところ」から同五二枚目表一行目までを「無視し得るものである。そして控訴人の仕入価格は一様ではない(原審における控訴人)ことや控訴人が松本建工から交付された図面に原価計算を書き込んだものであると主張するものの中には原価率が三〇パーセント台と低いものがある(甲六一八、六六三)こと等も考慮すれば、右のとおり控訴人の受注単価に低額のものがある事実、原審証人樫野仁八、控訴人の右各供述は推計を不合理ならしめる程度に控訴人の営業条件に差異が存在すると認めるに足りるものではなく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。控訴人は、同業者比率による推計よりも、平成三年から平成九年までの控訴人の営業の原価率であると主張する数値を前提に本人率による推計をするのが合理的である旨主張するが、右数値が正確か否かはともかく、控訴人は平成三年に事業を法人組織にしたことが認められる(弁論の全趣旨)から、控訴人主張の推計方法が合理的であると認めることはできない。」に改める。

5  原判決書五四枚目表四行目の「六八八」を「八一六」に改め、同五五枚目裏一〇行目の「右2」を「右1」に改める。

五  結論

よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法六七条一項、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結の日 平成一一年二月一〇日)

(裁判長裁判官 大出晃之 裁判官 中西茂 裁判官竹江禎子は転補につき署名押印することができない。裁判長裁判官 大出晃之)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例